コンセプト

ピョンヤン・コンセプト 

 

 政治的に孤立政策をとる北朝鮮の首都である平壌は、現代に構築されてきた都市の体系からはずれ、独り異次元の世界で存在している。それはまさに現代の異端である。

 しかし、視点を変え俯瞰してみた場合、平壌という都市もまた、この21世紀に生きる人類が連綿として築き上げてきた文明の一部分であるということにも気が付く。

 平壌の都市人口は約250万人である。これはパリ市の230万人、名古屋市の220万人よりも多く、100万人以上の都市をメトロポリスと規定している状況から見て、規模としては世界的にも大都市の部類に入る。

 21世紀の都市論から見て、現代の都市文明は国家体制と切り離された形で活発化しているのがわかる。世界中で都市と都市の間に相互依存の関係が緊密に機能しているのがその特徴になっているのだ。即ち、都市のネットワーク化である。当然そこには東京があり、ニューヨーク、ロンドンそして北京やカイロもまたそのネットワークの中にいる。

 世界の大都市の間を結ぶ空路がどんどん整備されてゆき。これにより、人の移動が国境を越え自由になった。国家の枠組みを超えた「横の繋がり」である都市文明の発展に大きなきっかけを与えたのである。そして今や、人間や金融だけでなくインターネットを通した個人レベルの情報の移動・共有までが自由になり、都市間の結びつきは世界規模で蜘蛛の巣状に網羅されることとなった。つまり、この世界をネットワークでつないだ中核都市の連帯構造こそが、来るべき文明体系となる「無国籍企業によるグローバル経済」の母体(プラットホーム)となっているのである。

 現代における都市文明の本質とは、都市の間での相互依存の経験値により、個別にあった都市機能の無駄が省かれ、適正化が進むことで起こる「価値観の共有」なのである。今や、都市の中心層は、個人の属性である人種・性別・年齢、そして生まれつきの身分などといったその土地固有のしがらみから解放されつつある。つまり、こういった「風投資」のいい合理性を備えてゆくことで、都市の繁栄が継続的に可能となっているのだ。逆に言えば巨大化する都市の繁栄を維持するためには、このネットワークが絶対的な条件となっているのである。

 平壌が驚くべき存在なのは、250万の人口を擁する大都市でありながら、世界で唯一このネットワークから完全に外れたところで、この規模の都市を維持しているというところにある。

平壌には他の都市にはない独自の都市コンセプトがある。それがどういったものなのか。最後の「全体主義国家の理想都市」それはもはや現代の遺物としての文明アートとも呼べるものであろう。ピョンヤンという都市は、その概念そのものが、一つの完成された都市型のコンセプト・アートなのだ。それは、人類が行き着いた一つの結果である。